稲田防衛相:PKO戦闘答弁に波紋 野党「語るに落ちた」

稲田防衛相:PKO戦闘答弁に波紋 野党「語るに落ちた」


稲田防衛相:PKO戦闘答弁に波紋 野党「語るに落ちた」

自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)を巡り、稲田朋美防衛相の国会答弁が波紋を広げている。現地の政府軍と反政府勢力の争いを「戦闘行為」と認めれば憲法9条に抵触しかねないので、表現を「武力衝突」と言い換える--。自らあけすけにそう認めたとも受け取れる答弁をした。野党側は「語るに落ちた」と攻勢を強めている。【川崎桂吾、遠藤拓】

 問題の答弁は8日の衆院予算委員会で飛び出した。民進党の小山展弘氏が、廃棄したとされる陸上自衛隊部隊の日報が見つかった問題を取り上げ、日報の「戦闘が生起した」という記述について政府の認識をただした。

 南スーダンの首都ジュバで昨年7月、政府軍と反政府勢力の大規模な衝突が起き、戦車も繰り出され死傷者数百人が出た。日報はこれを「戦闘」と表現したが、稲田氏は「一般的な用語では戦闘だが、法的な意味では戦闘ではなく武力衝突」と説明。食い下がる小山氏に「憲法9条上の問題になるので『戦闘』ではなく『武力衝突』という言葉を使っている」などと述べた。

 答弁を受けて国会前で10日夜、市民ら数百人が「大臣辞めろ」と抗議の気勢を上げた。政治学者や野党議員は「憲法に抵触する行為も言い換えれば合憲になるのか」「言葉の選び方一つで政府のやりたいようにできるなら立憲主義の否定だ」と批判を繰り広げた。


稲田朋美防衛相=国会内で2017年2月8日午前11時10分、川田雅浩撮影© 毎日新聞 稲田朋美防衛相=国会内で2017年2月8日午前11時10分、川田雅浩撮影
 14日の衆院予算委でもこの問題が取り上げられ、稲田氏に代わり安倍晋三首相が答弁して紛糾した。民進の辻元清美氏は「(首相に)助けてもらわないと答弁できない。蚊帳の外大臣かと言われかねない」と批判。野党側が「首相の駆け付け警護はやめて」と皮肉る場面もあった。

 憲法9条は海外での武力行使を原則禁じている。派遣先の国で戦闘行為があればPKOを実施する条件(PKO5原則)が崩れ、撤退に直結する。泥沼化する南スーダンから引くに引けない状況で現実の方をねじ曲げている、とも見える。

 「ぶっちゃけ答弁です」と驚くのは著述家の菅野完氏だ。「飲酒運転を誰かに見とがめられ、飲んでいないとウソをついたが、酒臭いぞ、と追及された。そこで『一般的には酒を飲んでいますが、法律に違反するので法的には飲んでません』と釈明するようなもの」と、稲田氏の居直りを批判する。

 「戦闘行為と武力衝突の区別など、国際法の前では意味をなしません」。東京外語大の伊勢崎賢治教授は稲田氏の答弁を一蹴した。国連職員として各地の紛争処理に長年かかわってきた。

 伊勢崎氏は「稲田さんは正直過ぎだ」と話し、歴代政権は自衛隊の海外派遣と憲法の整合性を保つためにウソを重ねてきた、と見ている。「2011年に南スーダンPKO派遣を決めたのは旧民主党政権であり、今の民進党が与党でも同じ釈明をするだろう」と分析。「現地の情勢は悪化し、自衛隊は危険な状況に追い込まれている。これを政争の具にせず、与野党が協議し自衛隊をいったん撤退させるべきだ。その上で改めて日本に何ができるか冷静に議論すべきだ」と問題提起する。

 稲田氏の責任を問う声は全国に広がり、16日に札幌市と名古屋市で、17日には国会前と大阪市で抗議集会が予定されている。
北海道の部隊、次々派遣

 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の状況を記録した2016年7月の日報に「戦闘が生起」などと記載された時期に活動していたのは、北海道千歳市の陸上自衛隊第7師団を中心に編成された10次隊だった。

 部隊は同年5月から12月にかけて首都ジュバに派遣され、他国部隊の宿営地や道路整備などに従事した。

 また自衛隊は現在活動中の11次隊に続き5月から派遣される12次隊について、帯広市の陸自第5旅団を中心に編成することを決めている。政府は11次隊と同様に、現地での駆けつけ警護と宿営地の共同防護の任務を付与する方針。【三沢邦彦】

「別の真実」連想

 米国在住の映画監督、想田和弘さんの話 米トランプ政権の高官がメディアからウソを追及され、「オルタナティブ・ファクト(別の真実)だ」と開き直った。稲田氏のケースもこれと似ていると感じた。当の本人にもウソをついている自覚があり、事実は重視されないというニュアンスだが、こうした相手とは事実関係で争いが生じ、議論が先に進まなくなる。稲田氏の答弁も含め、こうした発言を放置せず、しっかりチェックしていく必要がある。

戦前の歴史を連想させる

 「大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争」を著した辻田真佐憲さんの話 安易には比べられないが、戦争を事変と言い換え、撤退を転進と表現した戦前・戦中の歴史を連想させる。度重なる言葉の言い換えは、国民だけでなく軍人の現実認識もゆがめていった。「霞が関文学」と呼ばれる官僚話法で、その轍(てつ)を踏んではならない。統合幕僚長が「戦闘行為」という言葉をなるべく使わないように指導したことが気にかかる。

政治家として無責任

 井上達夫・東大法学部教授(法哲学)の話 かつてイラク派遣で小泉純一郎首相が「自衛隊のいるところが非戦闘地域だ」と開き直ったのと同じ理屈だ。法の支配も何もあったものではない。稲田防衛相は政治家として無責任であり、法律家として欺瞞(ぎまん)に満ちている。ただ、護憲派も彼女を責められない。個別的自衛権を認める従来の解釈改憲を是とする時点で、9条を裏切っていると言えるからだ。そのツケを払うのが、現場の自衛隊になることを自覚すべきだ。


毎日新聞より引用
[ 2017/02/15 23:04 ] 建築紛争 | TB(-) | CM(-)