早稲田大学 天下り問題

早稲田の堕落 官僚が年収1400万円の教授になれたワケ


あらゆる制約から解放され、本質を見据えた自由な批判精神が学問の独立の礎である>。建学の精神はかなぐり捨ててしまったのか──。早稲田大学が今、文部科学省の天下りあっせん問題で揺れている。違法な再就職を受け入れたばかりか、文科省の隠蔽工作にまで加担した。

「知らなかったでは済まされない。どうやったら伝統ある大学の教授に突然なれるんですか。やっていいことと悪いことがある」

 今回の問題を受けて、早稲田大名誉教授の大槻義彦氏は怒りが収まらない。文科省OBが大学に再就職する場合、事務職に就くことが多い。しかし、天下りのあっせんを受けていた吉田大輔・元高等教育局長(61)が得たポストは「教授」。年収1400万円という厚遇で迎え入れられていた。しかも、一連の過程で文科省と吉田氏と大学が口裏合わせをするという事態まで起きていた。

 大学内部からも批判の声が出ている。

「ここまで露骨な違法行為をしているとは思わなかった。まさか想定問答まで用意しているなんて……」(早大幹部)

 文科省の現役職員の一人は慌てふためいて言う。

「大変だよ。やりすぎだよね。あそこまでやるかっていう声が内部にはある。内閣官房から全省庁を調査しろ、と指示が下りている。事情聴取されちゃうよ」

 改めて、今回の文科省の天下りあっせん問題の経過をたどろう。

 国家公務員法は再就職について在職中の求職活動や省庁のあっせんを禁じているが、内閣府の再就職等監視委員会によれば、文科省が天下りをあっせんした疑いがあると指摘した事例は4年間で計38件。うち10件を違法と見なしている。

 早大のケースでは、人事課の現職職員が関与。同省人事課の職員は早大側に「まもなく退職する人がいる」と伝え、吉田氏の履歴書を送付した。吉田氏は2015年8月4日に文科省を退職。採用面接はそのわずか2日後だった。退職から2カ月後の10月1日に、早大教授に就任した。

「局長に自ら履歴書を書かせて就職活動させるのはしのびない、というのがあっせんの理由らしい。その発想自体がおごりであり、あまりにも世間の感覚から離れている」(同省OB)

 実は、吉田氏は著作権法のエキスパートで、在職中も横浜国大へ教員として出向したこともある。

 元審議官の寺脇研・京都造形芸術大学教授はいぶかしがる。

「知的財産権はTPPでも重要になる。著作権の分野では引く手あまただっただろうに。なぜ、焦って早大に天下りしたのか」

 吉田氏が教授として就いたのは大学総合研究センター。早大のホームページには吉田氏の業務は「政策の動向の調査研究」「文科省の事業に関する大学への助言」と紹介されていた。

 教育ジャーナリストの後藤健夫氏は、そこに文科省の思惑を読み取ったという。

「(吉田氏の業務紹介は)文科省と大学のパイプ役に来たと書いているも同然。文科省はいま大学教育や高校教育など制度改革の転換期にある。文科省の政策意図に誘導するため、そのコミュニケーションのツールとして吉田氏を送り込んだと見るべきです。大学をコントロールするために、文科省は私学助成などカネをちらつかせるやり方です」

 そんな意図があったかどうかは不明だが、「学問の独立」や「在野精神」を謳う早大でも、抗しがたい「うまみ」があるという。

 文科省から早大に支出した私学助成金の額は、15年度が90億2179万9千円。前年の14年度が86億1118万7千円に上った。全国でも一、二を争う助成額だ。

「受け取っている補助金の額からしたら、早稲田は天下りを一人雇うことくらい、痛くもかゆくもないんじゃないでしょうか」(別の私立大学教員)

 ある大学関係者は話す。

「一般に、大学側としては補助金を申請する際、文科省OBがいれば審査がスムーズにいくのではないかという期待がある。資料から文科省の政策の方向性を読み取ってもらい、方向性に沿った研究をすれば資金が得られやすいという考えも働く。元キャリア官僚がいるほうが圧倒的に有利でしょう。自分で資料を作っていたんですから」

 もちろん、官僚にとっても天下り先として「早稲田大学教授」は魅力的なポスト。吉田氏にとっても悪い話ではなかったのだろう。


有名大学の建学の精神が揺らいでいる (※写真はイメージ)© dot. 有名大学の建学の精神が揺らいでいる (※写真はイメージ)
「やはり名誉。名も知れぬ大学よりは、早稲田大学教授というネームバリューは使い勝手がいい。本を出しませんか、テレビに出ませんかといった引きがあるでしょう。黙っていても学生が集まる大学だから、雑務もそれほど多くはないと思います」(大学関係者)

 冒頭の大槻氏の怒りは、こうした背景を踏まえてのこと。いくら大学に予算がほしいからといって、教授として採用していいのか、早大も足元を見られたものだと言いたいのだ。

 情けないのは、監視委のヒアリング調査に対し、早大側は文科省の人事課の書いたシナリオに沿ってウソの回答をしたこと。本当は、文科省側から早大へ吉田氏の再就職を要求したにもかかわらず、逆に早大側が求めたように説明するよう指示されていた。

「人事戦略上、高等教育行政に詳しい人材を求めたいと考えた」として、以前、早大に在籍した文科省OBに仲介を依頼。吉田氏を紹介され、退職翌日に連絡を取ったという虚偽のシナリオが「想定問答」に書かれていた。もちろん、この文科省OBはまったく関わっていない。

 1月20日、早大の鎌田薫総長は記者会見で釈明した。

「形式的な調査なので内容に沿った供述をしてほしいと文科省から依頼があったので、(早大の人事担当者は)最初は意向に沿った回答をした。文科省が違法な指導をすることはあり得ないと思っていた」

 まるで被害者のようなふるまいで、「不適切な利益供与・便宜供与を求めたこともなければ、受けたこともない」と強調した。だが、早大の関係者の目は厳しい。

「行政手腕のある人に来てもらうメリットは実際あるのでしょう。でも、ルール違反を犯しては、文科省と癒着して受け入れたと勘繰られても仕方ない」

※週刊朝日 2017年2月10日号より抜粋

サイト dot より引用
[ 2017/02/02 13:06 ] 建築紛争 | TB(-) | CM(-)