天野篤 先生は 公道では白衣ではなく、

ひたむきに生きて
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インフルエンザ予防接種を=天野篤・順天堂大教授


毎日新聞2015年11月5日 東京朝刊

死に至る合併症の危険も

 毎朝、午前5時ごろ家を出ますが、寒さを感じる季節になりました。そろそろインフルエンザの流行が気になっています。元気で体力のある世代ならば感染しても、発熱、せき、全身のけだるさ、関節痛などでとどまり、重症になることは少ないと言われています。ただし、このような方でも予防に努めると共に、感染した際には周りにうつさないよう気をつけてほしいと思います。


 人口の4分の1以上が65歳以上という超高齢社会の日本では、加齢により体力や抵抗力が落ちた方や糖尿病治療、がん治療や大きな手術後で免疫力が低下した患者さんも多く、死に至る合併症も数多く報告されています。特に最も怖い合併症が、インフルエンザの症状が出てから二次的に発症する重症の細菌性肺炎です。米国のデータでは、肺炎になった高齢者のうち3割以上が重症化した年もあります。せきやたんが多く出ているところに細菌感染すると呼吸困難から低酸素状態に陥り、臓器機能低下から多臓器不全となることもあります。最悪のケースでは、細菌自体の毒素から内臓出血しやすい合併症が表れ、急死することもあります。

 このように怖いインフルエンザにかからないようにするために最も大切なことは、ウイルスを体内に持ち込まないことです。せきやたんからの飛沫(ひまつ)感染がほとんどなので、マスクによる予防、手洗いとうがいを頻繁に行うことが効果的です。

 ただし、ウイルスは目に見えないので完全に予防することは困難です。重要になるのがワクチン接種です。体内の免疫機構を活発化させて予防します。インフルエンザは変異の多いウイルスのため、一度の接種で毎年の予防はできません。変異した株ごとにワクチンを作製し、流行前に接種を受けねばならないのです。厚生労働省は多くの研究データからウイルスの流行予測を立てています。これまでは流行前に決めた3種類のウイルスをワクチンに入れていましたが、今年から4種類に増やして予防効果を高めています。1回の予防接種には約4000円の費用がかかります。接種に際しては問診を受け、体調の良い時にしてください。必ず予防できるとは限りませんが、患者さん自身の病歴、自己管理と医師の診察が副作用を防ぐ鍵です。

 私も先日、今年のワクチン接種を受けました。医療従事者がインフルエンザに感染すると、院内感染から多くの患者さんに迷惑をかけることになるからです。私自身はワクチン接種で発熱しないのですが、接種した部位のわずかな痛みと全身のだるさが一晩だけ表れました。この程度の副作用で済んでインフルエンザ感染の可能性を激減できるのであれば許容できます。健康に自信があって、インフルエンザなんか怖くないという人でも、一度感染したら自分だけの問題では済みません。ぜひ接種を受けた上で健康自慢を継続していただくことをお勧めします。=次回は12月3日掲載


 ■人物略歴

あまの・あつし

 1955年生まれ。埼玉県出身。83年日本大医学部卒。亀田総合病院、新東京病院などを経て、2002年から現職。12年に天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀したことで知られる。

毎日新聞より引用
http://mainichi.jp/articles/20151105/ddm/013/070/007000c
[ 2016/06/03 16:29 ] 建築紛争 | TB(-) | CM(0)

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