三井不動産が「傾斜マンション」の謝罪会見をしない本当の理由

実力者、岩沙会長から人心が離れつつある


三井不動産の実力者、岩沙弘道会長(73)が追い込まれつつある。子会社が販売した横浜市の大型マンションの傾斜問題でリーダーシップを発揮しないばかりか、責任を部下や受注者に押しつける責任逃れに終始しているためだ。3月末に横浜市に提出するはずの調査結果報告も3カ月以上遅れる始末で「いざという時に矢面に立たないならもはや老害」と社内からも人心が離れつつある。

ことの発端は2015年10月に遡る。横浜市のマンションのL字に接した建物の接合部で2センチの段差が生じていることに住民が気づいたのだ。調べたところマンション西棟の一部の基礎杭が地中の支持層にまで届かず、地中で浮いたままになっていることが分かった。

三井不動産のマンションは不動産業界のなかでもトップブランド。同じ立地で同じ仕様だとしても「他社よりも10~20%は高い値付けが可能」とされてきた。その三井ブランドのマンションの杭が設計通りに施工されておらず、住民の生命を脅かす状態になったわけだから驚き以外の何ものでもない。

ただ、ここで不思議なのは三井不動産サイドは報道陣向けの記者会見などをいっさい開いていないことだ。昨年11月、2015年4~9月期連結決算を発表する席上で常務執行役員の佐藤雅敏氏が形式上、「申し訳ない」と述べたほか、12月末、3月末の読売・日経新聞の単独取材で菰田正信社長が陳謝したものの、必ずしも積極的に謝罪する姿勢は示していない。

三井不動産の幹部は「事態がはっきりしない限りは、きちんとした対応がしづらい」と説明するが、本当にそうだろうか。そもそも3月末に提出するはずの報告書の締め切りを自ら踏み倒しておきながら「はっきりしない」とは、いったいどういうことか。本を正せば三井不動産のせいであり、それを理由に説明責任を果たせないとするのは本末転倒も甚だしい。

にも拘わらず、三井不動産の対応には最初から誠意は感じられない。徹頭徹尾、逃げ腰だ。不祥事発生の場合、最高責任者が即座に前面に出て事情を説明、対応するほうが下手に逃げ隠れするよりもダメージは少ない。メディア研究で定評のある三井不動産なら、そんな初歩的な「いろは」は百も承知のはずだ。しかし、木で鼻をくくったような対応を続ける背景には、恐らく岩沙会長の指示があると思われる。


不動産市場を活性化させた功労者の引き際


こんな証言がある。傾斜マンション問題が発覚した夜、岩沙会長はある政界人に「客の対応さえ間違わなければ大丈夫」と言ったというのだ。つまり対応はマンションを購入してくれた客だけでよく、下手にマスコミや世間を相手に騒ぎを大きくするなというわけだ。

確かにそう言われると腑に落ちる。よくみてほしい。三井不動産は正式な謝罪会見は開かないのに「顧客対応」は徹底している。(1)全棟建て替え(2)新築価格での住戸の買い取り(3)1戸あたり慰謝料300万円など購入者に提示している条件も破格だ。

ただ、ここにもしたたかな計算が透けてみえる。住民補償の費用負担は元請けの三井住友建設につけ回せるという判断だ。顧客には「加害者」として札びらを積み上げて謝罪しておきながら、ゼネコンには「施工責任の範囲内で起きたことなので三井住友建設に求償する」(菰田社長)というわけだ。究極の二枚舌である。

しかし、岩沙会長の意図を差し引いたとしても、なぜゼネコンや建材メーカーは黙っているのだろうか。三井住友建設にしても旭化成にしても早々に社長が会見、旭化成の浅野敏雄社長にいたっては記者会見中に落涙するという醜態までさらしている。三井不動産だけが「善意の第三者気取り」でだんまりを決め込んでいられるのだろうか。

それはあくまでも三井不動産がゼネコンにとって「お施主様」という優越的地位にあるためだ。マンションデベロッパーのなかでも三井不動産は圧倒的なボリュームを誇るガリバーで、不動産経済研究所(東京都新宿区)の調査によると2015年の供給戸数は首都圏で3470戸の第2位。しかも仕様は高級で、ゼネコンにとっては絶対に無視できない優良顧客なのだ。ここで世間の批判を一身に背負い三井不動産の盾になっておけば、その見返りはいずれまた新築マンションの大量発注という形で返ってくるというわけだ。

こうした業者間の皮算用はさておき、三井不動産の今回の振る舞いはあまりにも無責任という見方が強い。しかも、そういった声は社内にもある。岩沙という実力者を守るために、堂々と非を認めることをせず立場の弱い受注業者にだけ責任を押しつけていていいのか、という良識派も少なくないのだ。

岩沙会長が不動産投資信託(REIT)を立ち上げ不動産市場を活性化、財界活動を通じて業界の地位も押し上げた功労者であることは誰もが認めるところ。それだけに引き際は間違ってほしくないものである。

プレジデント オンラインより引用

[ 2016/04/15 12:39 ] 建築紛争 | TB(-) | CM(0)

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